ヘッドライト早期点灯研究所

プロに聞く

2015年12月02日

ヘッドライトと燃費の関係 -W/モータージャーナリスト 中村孝仁さん

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回は特にベテランドライバーからよく聞くうわさ。ヘッドライトは燃費に影響がある?について、モータージャーナリストの中村孝仁さんにお聞きしました。

事故を防ぐための対策とは

暗くなったら、ヘッドライトを点ける。これ当たり前の行為なのだが、果たしていつ点けるのか。最近我々が最も注視して自動車ユーザーにわかり易く説明したい話題がこれだ。つまり薄暗くなると、視認性が極端に低下する。それは何も自動車のドライバーだけではなく、街を行き交う人々や自転車、あるいはオートバイのライダーも同じ。だから、お互いがそれぞれ注意し合って見られやすくするに越したことはない。歩行者なら明るめで被視認性の高い洋服を着る。−ライティングガールのような派手なものはちょっと抵抗があるかもしれないが−。ライダーの場合はウェアのどこかに反射材がついたものを着るとか、対策はある。自動車のドライバーは、やはりできるだけ早めにヘッドライトを点けること。これしか対策はない。

ベテランドライバーはヘッドライトを点けるのに抵抗がある?!

しかし、早くヘッドライトを点けるのに抵抗がある人がいることも確かだ。特にベテランドライバーにそれが多い。理由はライトの耐久性を心配したり、燃費に影響があると考えるドライバーがいるからだ。いずれも一理ある。これはモノが仕事をする時に、必要なものがなんであるかを考えればわかることだ。つまり、仕事をする能力を一般的にはエネルギーと呼ぶ。そのエネルギーには多種多様あるが、自動車の場合は熱エネルギーを運動エネルギーに変換してクルマを動かしている。一方のヘッドライトは熱エネルギーを光エネルギーに変えることで前方を明るく照らしてくれる。

ヘッドライトと燃費の関係

その昔、自動車の発電機がダイナモと呼ばれる直流発電機だった頃は、発電能力そのものが低かった。特に冬の雨の日でワイパーやヒーターを使っていると、信号待ちでライトが暗くなったり、ワイパーの動きが遅くなったりしたものだ。そのような経験のあるベテランドライバーの場合、少しでも電気的な負荷をかけたくなくて、信号待ちでヘッドライトを消したものである。そうした名残が今もあるのだと推測する。
ただ、今はオルタネーターという交流発電機に変わり、発電容量も十分なので、ヘッドライトを点けたぐらいで電気的な影響はほぼない。と言える。

では燃費に関してはどうか。冒頭でお話ししたようにクルマはエンジンで作り出す熱エネルギーを、運動エネルギーに変換することで動いている。実は上述したオルタネーターもエンジンを使って回しているので、そのオルタネーターを回すだけで当然ながら燃費には影響はある。オルタネーターで発電された電気はバッテリーに貯められて、ヘッドライトはこのバッテリーから得る電力で点灯されている。だから、基本的にはバッテリーがフル充電されるまで、オルタネーターには仕事をしてもらう必要があるので、あまり電気を使いたくない…。つまり、オルタネーターの負荷を減らしたいと考えるドライバーが、燃費を気にするわけなのだ。しかし、ヘッドライト自体も変わって来ているので、あまり心配をする必要はない。

昔は家庭用電気と同じ白熱球がヘッドライトにも使われていた。点灯している白熱球を手で触ったことがあるだろうか。下手をすると火傷をするくらい熱い。では、蛍光灯はどうだろう。点灯していても触っても大丈夫だ。ちょっと暖かいくらい。それが今脚光を浴びているLEDはどうだろう。触っても冷たい。是非、白熱球の発する熱と、LEDの発する熱を比べてみて欲しいのである。発熱するということは当然、熱エネルギーが十分に光エネルギーに変わっていないことを意味する。つまりロスだ。LEDの場合はそれがほとんどないから、熱を発しないし消費電力も低いため、自動車のヘッドライトも最近はこのLEDに置き換えられつつある。

とまあ、技術の進歩は燃費や耐久性を気にすることなく、日の入りの30分前からヘッドライトを点けても大丈夫な状況になっている。だから、ヘッドライトは早めに点灯して、周囲に自車の存在をアピールすべきなのである。

●中村 孝仁(ナカムラ・タカヒト)
1952年8月東京生まれ、神奈川在住。
幼くして自動車に目覚め、4歳の時にはモーターマガジンの誌面をかざる。免許取得後、大学時代に、当時解禁されたばかりの並行輸入スーパーカーショップでバイトをし、フェラーリ、ランボルギーニ、さらにはディトナコブラなどをドライブ。また、ノバ・エンジニアリングで『黒い稲妻』のニックネームを持っていた桑島正美選手の丁稚メカニックとして働いた経験を持つ。その後渡独。2年半に渡りドイツで多くの自動車ミュージアムを見て回り、渡独中の1977年からフリーモータージャーナリストとしての活動を開始、今日に至る。モータージャーナリスト歴34年目に突入。
モータージャーナリスト中村孝仁の自動車資料館 ON THE ROAD MAGAGINE
モータージャーナリスト・中村コージンのネタ帳(Ameba blog)
RESPONCE [試乗記]

 

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