ヘッドライト早期点灯研究所

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2013年08月30日

早期点灯実践事業者レポート:日本通運の取り組み

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。
すでに早期点灯を全社をあげて実施されている企業などにもお伺いし、
早期点灯を実践することとなったきっかけや、苦労されたことなどもお伺いしていきます。

今回、研究所メンバーは日本通運株式会社を訪問し、
早期点灯の取り組みをスタートした時期や発端や現在までの経緯について、業務部で安全管理に取り組むお仕事をされている一色聡さんにお話をいただきました。

  

取り組みのスタートから、模索を繰り返してきた10年間


研究所:今日はよろしくお願いいたします。まずはヘッドライトを日中から点灯するという取り組みについて、始めた時期やきっかけを教えていただけますか。

一色:2002年の12月から翌年の3月までの4ヶ月間、試行ということで取り組みが始まりました。その時期、交通事故件数が下げ止まりの状態、特に薄暮時の事故が減らないということで、試行しました。効果としては前年比で17%、事故が減少し、ルートバンのような街路を走る比較的小さい車種では、34%減少し「効果があった」という認識でした。ですので、2003年の4月からは無期限で実施されています。この時から「昼間もずっとヘッドライトを点ける」昼間点灯として実施されていましたが、それから現在まで、実はいろいろな経緯があります。

研究所:10年間の間に試行錯誤があったということでしょうか。

一色:現場からいろいろな声が出されました。ヘッドライトを終日点灯しているとバッテリーの損傷が激しいのではないかという不安ですね。実際にバッテリーがあがったという事例はありませんでしたが、バッテリーの損傷は費用増にも繋がるということで、昼間点灯に疑問が出されたのです。そうしたことから、ヘッドライトの変わりに小さいデイタイムランプ、LEDを点灯しようということになりました。それが2003年の12月です。ヘッドライトは手動で点灯するものです。ドライバーにとって車は大切ですので、バッテリーの損傷を心配して点灯しなかったり、点灯忘れがあったりもしました。デイタイムランプですとエンジンをかければ点灯しますし、LEDなので消費電力も少ないということで切り替えたのです。

研究所:現在はどうされていますか?

一色:2009年の6月になると、デイタイムランプでは点灯の効果がないのではという意見が出まして、ヘッドライトにしようということになりました。ヘッドライト反対派としてはバッテリーのことやクレームを懸念していたことでしょう。車の性能もあがってきましたし、バッテリーはそこまで損傷しないということが実際に分かりました。それに、デイタイムランプとヘッドライトでは照射率が違います。路地を走っていたりすると、デイタイムランプは直接目に入らないと見えませんが、ヘッドライトだと死角からでも見える。車が通っているなと気がつけるのです。

研究所:こうしたことから現在では全社的にヘッドライトを点灯しているということですね。運動をスタートする際に、おそらくドライバーさんが気にされるのは、世の中がライトを点けていない時間にライトを点けるという行為ですよね。

一色:昼間点灯に違和感があるというのはおっしゃる通りです。大型のトラックは背が高く、ヘッドライトの位置も高い。ただでさえ威圧感のある車体にヘッドライトを点けていると、余計に一般の乗用車の方に圧迫感を感じさせてしまいます。そうした時、ライトを消したりするのは、運転手個人の判断に委ねられています。「まぶしいから消して」というクレームも実際にありました。実施当初はよく「ヘッドライトが点けっぱなしだよ」ということで、パッシングされていたんです。それで、「昼間点灯中」というシールを車体に貼って走っていました。現在は昼間点灯が世の中に定着しはじめたので、シールは貼っていません。

 

個々人の意識を変えることが、よりよき社会への鍵


研究所:交通安全のためとはいえ、場面場面でやりづらさを感じるところがありますよね。「ヘッドライトの点灯は歩行者を守るためにやっている」というのが、歩行者側の意識にあるかどうかというのもあるかと。

一色:そうですね。それになぜ点けるのかということをドライバーに理解させるということが重要です。ドライバーの意識の変化が必要だと。

当社には運転時5原則というものがあります。その5原則のなかに昼間点灯の完全実施という項目が入っています。ですので、当社の従業員であれば、「昼間点灯」という言葉が必ず頭の中に入っています。ただ点灯は人間の行動に頼るものですから、点け忘れはけっこうある。人間がやることですのでなかなか定着しない。6~7割の点灯という感じでした。

正直に言いますと、ヘッドライトを点けたからといって交通事故が減ったという効果は見えないんです。効果は数字としては追いかけられない。ですが「やめたら増えるよ」という話しはしています。当社の理念でもある「社会の発展に寄与する」ということを考えますと「交通事故を起こすような会社であってはならない」ということを、各部署で話してもらっています。交通弱者に対する自分たちの道路でのあり方を考えてもらうためにも。

研究所:これまでの試行錯誤のお話を伺い、とても勉強になりました。やろうかどうか迷っている人の勇気になっていくだろうな思います。ありがとうございました。

 

日々の地道な努力が道路の安全に寄与する、そうした努力を一人一人のドライバーがやり続けるために、いかに伝えていくかが大切だと繰り返しお話くださった一色さん。ご自身もドライバーとして活躍されていた一色さんの、「ヘッドライトを点灯していれば、死角からでも車の接近に気がついてもらえる」という言葉には、経験に裏打ちされた説得力がありました。

日本通運の実施する「ヘッドライトの点灯」は、おもいやりライト運動が進める、日没の30分前からヘッドライトを点す、「早期点灯」の取り組みと同じ想いです。

「ヘッドライトを点灯していたから事故を防ぐことができた」という数値は算出しにくいもの。いわば数字で納得できないものを、浸透させ実施させていく難しさもあることでしょう。今回は取り組みの先輩としてお話をお伺いしましたが、今後の取り組みに関しては、おもいやりライト事務局としてもタッグを組んでいければと考えています。

車を運転するドライバーのみなさん、道路を一緒に使用する他のドライバーや歩行者のための「おもいやり」の気持ちでもあるヘッドライトの日没30分前点灯を、ぜひ習慣にしてください。オートライト機能のある車種にお乗りの方は、便利なオートライト機能をON!にして、夕暮れ時の安全に一役買ってくださいね。

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