ヘッドライト早期点灯研究所

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2013年08月23日

早期点灯実践事業者レポート:佐川急便の取り組み

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。
すでに早期点灯を全社をあげて実施されている企業などにもお伺いし、
早期点灯を実践することとなったきっかけや、苦労されたことなどもお伺いしていきます。

今回は佐川急便株式会社にお伺いし、早期点灯の運動を始めたきっかけや取り組みについて、
人事・安全企画部安全企画課の佐々木俊行さんにお話をいただきました。

 

取り組みは地方から全国へ


研究所:御社でのヘッドライト早期点灯の取り組みはいつがスタートなのでしょう?

佐々木:長野県の松本と長崎で行政関係とタイアップして地域的にやっていたものを、当時の本社が吸い上げて、全国で実施したという経緯があります。トライアルを開始したのが2001年12月で、1ヶ月間実施しました。やりはじめた時のドライバーの声としては、「ヘッドライトを点灯していると道路上で非常に目立つので、周りから見られることで「見られている」という意識が高まる。」という意見が多くありました。そうしたことから効果があるということになって、翌年、2002年の3月21日より無期限で実施という通達を出し、今日に至るまで取り組みを継続しています。

研究所:「D.L.D(デイタイム・ライディング・ドライブ)運動」の実施についてという通達ですね。社員の方への徹底はどのようにされましたか?

佐々木:安全管理者が公道に出て見回りをし、マニュアルにそった運転ができているのかということを検証する、「安全パトロール」と呼ばれているものがあり、そのチェック項目にD.L.Dがあり、実施状況を検証しています。また、送り出しの時に管理者が出口に立ち、「安全運転で行ってこいよ」と呼びかけるのですが、その時にもヘッドライトを点灯しているかどうかを確認しています。現在では取り組み自体が定着化しています。


事故件数の数値には表れない“意識の向上”という効果


研究所:通達にはトライアル期間の実施効果が顕著であると明記されていますね。

佐々木:D.L.Dのみの効果は数字では表しにくいものなんです。その他の安全対策もやっておりますし。ただ、安全意識に対する効果というのはあると思います。ヘッドライトを点灯することにより、公道で目立つ存在になる、「見られる」ことでドライバーの意識を向上させると。それと、エンジンを点けて一番最初にやるのがこのD.L.Dなんです。そこで気持ちを切り替える効果があると思います。「これから運転するんだ、安全運転でいくぞ」と、ドライバー自身の気持ちが切り替わる。事故は薄暮時が一番多いと言われていますが、運転時には必ず点けるわけですから、ライトの点け忘れがなくなります。運転時は気持ちを切り替えて、ライトを点けることで周りからも認知してもらおうと。

研究所:薄暮時以外の時間もライトを点灯することで、安全運転をするという意識をドライバー自身が持つということですね。

佐々木:取り組みの初期には、周りの車から「ライト点いてるよ」といわれたり、前の車に対して威圧感を与えてしまうということで、実施に抵抗感のあるドライバーもいました。そうであれば前の車に対しては車間距離を空けるよう指導しています。

研究所:2002年の通達時から、ライトを早期点灯する際の注意点が徹底事項として明記されていますね。徹底事項の中には前車に威圧感を与えない配慮として「車間距離の保持」ですとか、渋滞時や信号待ち、道を譲る際などのための「臨機応変な消灯」など。非常に具体的だと思います。

佐々木:安全の為に取り組んでいることですが、「自分たちだけ安全であればいいのか」と言われることもあります。「トラックが昼間点灯をすることによって、バイクが目立たなくなってしまう」という反対意見もありました。そうした意見に対しては丁寧に説明をするということを繰り返しています。配送の現場でも「なんでやってるの?」と直接問われることがあったと思います。

研究所:つらいところですね。佐川さんの安全を守るためだけではなく、ひとつでも多くの交通事故をなくそうという取り組みなんですよね。


自社で検証も「やっぱり目立たせるにはヘッドライトがいい」


研究所:これまでにこうした運動への検証というのはありましたか?

佐々木:ありました。効果や費用的にどうなのかということを、10年間ずっと検証し続けています。費用の面で言うと、バッテリーやヘッドライト、インパネライトの消耗率ですね。電球をずっと点けることで、どうしても切れるサイクルが早くなる。もし取り組みをやめたら、若干のコストダウンになるかもしれませんよね。あとはLEDに変更するという考え方もあります。実はワンボックスタイプの軽自動車はバッテリーに対する負荷が多いので、既にLEDライトに切り替えています。しかし、LEDライトではどうしても照射の方向が直線的で横から見ても目立たないんですね。やはり「目立つ」「目立たせる」ということであれば、ヘッドライトがいいと。そうした検証も過去に行なってきました。

研究所:軽自動車の割合はどのような感じなのでしょう?

佐々木:軽自動車は6000台、普通のトラックは2万台です。軽自動車のLEDは、ヘッドライトの上に点いているんです。軽自動車はバッテリーが弱いとうことで切り替えました。タクシー会社でもLEDを導入している所があるようです。

少し余談ですが、ヘッドライトに関係する「おもいやり」ということでいえば、信号のない横断歩道がありますね。歩行者はそういう道路でだいたい立ち止まって、車の流れが途切れてから横断しているのが実態だと思います。この場合、本来車は、横断歩道の手前で停止して歩行者を安全に横断させることが定められていますが、自分の車が止まって歩行者の横断を待ったとしても、対向車線の車が歩行者に気がつかなかったりして、停止しないということがありますよね。そういう時、ヘッドライトで「歩行者が横断するよ」と、パッシングして対向車に合図をすると、対向車線の車が歩行者に気がついて止まってくれる。そうすることで、歩行者が安全に横断歩道を渡ることができます。

研究所:これも「おもいやりライト」ですね! ヘッドライト点灯の取り組みに関しては、当初はいろいろとご苦労されたこともあったかと思います。しかし、「安全運転の取り組み」ということで、佐川さんをはじめとする企業さんが寡黙にやってきたことが素晴らしいなと感じました。今日はありがとうございました。

 

ヘッドライトを点灯する取り組みをスタートした当初から、さまざまなシーンを想定して実施を検証してこられた佐川急便さんの取り組みには、学ぶ所が数多くありました。ヘッドライトを点灯することによるバッテリーの消耗に関しても、現場の事情に合わせながらもヘッドライトの点灯を前向きに奨励されています。

佐々木さんが、「「目立つ」「目立たせる」ならばLEDやスモールランプではなく、ヘッドライト。」と言い切るのには、多くの人が知り得ない、地道な検証があってのことです。安全を守るということと日常の地道な努力が直結していることを考えさせられました。

佐川急便で毎日のように行なわれている安全に対する努力を、おもいやりライト事務局としても「ヘッドライト早期点灯」の立場から協力していければ、もっとさまざまな角度から道路の安全を向上させることができそうです。

ドライバーのみなさんも、日没30分前にヘッドライトを点灯するワンアクションで、道路の安全を自分たちの行動で高めていく、おもいやりライト運動にぜひご参加ください。暗くなると自動で点灯するオートライト機能を持っている車種の方は、オートライト機能をON!するだけでOK。
安心・安全な社会は、自分たちの一歩から。

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