ヘッドライト早期点灯研究所

調査・実験

2014年09月04日

夕暮れ時の交通事故分析レポート:イタルダ・インフォメーションNo.62制作担当吉田伸一さんに聞く夕暮れ時の交通事故の特徴

 

「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回は夕暮れ時の「交通事故の特徴」についてフォーカスします。
公益財団法人 交通事故総合分析センター(以下、イタルダ)が発行するイタルダ・インフォメーションという冊子でも2006年にこの「夕暮れどきに発生する交通事故」にフォーカスして交通事故のデータを分析しています。
今回は、このイタルダ・インフォメーション№62を執筆・監修された元 イタルダ 主任研究員の吉田伸一さんにこの特集を組んだ経緯や夕方の交通事故の特徴についてお聞きしました。

イタルダ・インフォメーションとは?

まず、イタルダは、交通事故と人間、道路交通環境及び車両に関する総合的な調査研究を通じて、交通事故の防止と交通事故による被害の軽減を図ることにより、 安全、円滑かつ秩序ある交通社会の実現に寄与し、もって公共の福祉の増進に資することを目的として平成4年に設立された公益財団法人(ホームページより引用)で、自動車メーカー、省庁、警察関係者の方で構成している組織です。
イタルダ・インフォメーションとは、イタルダが発行している、交通事故を調査・分析結果を分かりやすく解説しているもので、2014年4月末現在ではNo.103まで発行されています。(詳細はこちら
今回ご紹介するNo.62は2006年5月に発行された、夕暮れどきに発生する交通事故にフォーカスを当て編集された号です。

夕暮れ時の交通事故に着目したきっかけについて

政府は毎年、春と秋に全国交通安全運動を行っています。秋は日没も早くなることもあり、秋の全国交通安全運動では夕暮れの交通事故がフォーカスされることが多く、それに合わせた資料を制作しようと思ったのがきっかけで、吉田さんが企画・編集作業を行ったとのことです。
早期点灯研究所は、夕暮れ時の時間帯を定義する「薄暮」という言葉の定義に着目し、交通事故の発生する時間帯や状況について意見を交わしました。

「薄暮時」の時間帯って?

薄暮という言葉を辞書で引いても具体的な時間帯の定義はないのですが、吉田さんは夕暮れ前の時間帯をより定義するために様々なデータを調べた結果、飛行場にある掲示板を研究している方のデータで日没後から急激に暗くなるという事がありそのデータを元に「薄暮時」という時間を定義したそうです。

イタルダ・インフォメーションNo.62では、以下のように定義をしています。
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まず、薄暮時とは何時ころなのかを決める必要があります。屋外での明るさは、日没後の30分間で急激に変化するという実験結果があります。単に薄暗い時よりも、明るさが急激に変化するほうが運転(歩行)に支障をきたしやすいと考えられます。そこで、この時間帯を薄暮ととらえることにしました。
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No.62では日没後の30分間を薄暮と定義しているのに対し、おもいやりライトは日没前の30分を対象に活動を推進しています。この差について吉田さんも「日没前の30分間は、まだ明るいけれど、気づけば暗くなっていたという事もあり得る時間帯」であり、この時間帯に注意を喚起することは交通事故を減らすことに繋がるのではないか、との同意見でした。

交通事故の起きやすい時間帯について

イタルダ・インフォメーションNo.62にて紹介されている、一日を通しで見た事故の発生時刻をみると、全交通事故全体の90%以上を占める軽傷事故は朝、夕の通勤、通学の時間帯に多く発生しています。一方、死亡事故は夕方に多く発生するという傾向があります。

(図 section1-1)

「一日の内の何時頃に交通事故は起きているのでしょうか?」では、交通量、人出の多い時間帯がはやり事故にも繋がるというようにまとめられています。
「朝の通勤・通学時間はほぼ一定しており重なることが多く、その結果、交通事故の発生件数は急激に高まるが、夕方は下校、退社時間、買い物など、生活様式がまちまちのため、交通事故は増加傾向にあるものの朝ほど急激ではない。このように交通事故の発生は第一に生活のパターンの影響を強く受けると考えられる。ただし死亡事故は夕方のみにピークがあることが特徴で、その大部分は高齢歩行者が死亡する事故である。」と吉田さんは話されていました。


交通事故の起きやすい季節について


イタルダ・インフォメーションNo.62でまとめているデータでも、事故の発生件数が10月から12月にかけて増加傾向にあるという事が分かっています。
これについては、日没時刻が早くなり暗い時間帯が長くなることに加え、年末特有の忙しさ、秋から冬にかけて、暗めの服装の色が好まれる傾向も関係しているかもしれないとのこと。
実生活でも何となく想像できるシチュエーションですが、実際にデータとしても裏付けられていました。

交通事故にあいやすい年齢層について

次に、交通事故にあいやすい歩行者の年齢層について、イタルダ・インフォメーションNo.62の中でも「事故にあいやすい歩行者の年齢層は?」としてまとめられています。
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歩行中に事故にあった人の数を、屋外の明るさ別、年齢層別に比較しています。初めに説明したように交通事故発生件数は生活パターンの影響を受けるので、純粋に屋外の明るさの影響をみるためには事故発生時刻を固定する必要があります。検討の結果、18時台に限定し、事故発生季節を夏(日没前の“明るい18時台”)、春・秋(日没頃の“薄暮の18時台”)、冬(日没後30分程度経過した“暗い18時台”)に分ければ明るさの影響だけを取り出せることが分かりました。図7をみると、“薄暮の18時台”と“暗い18時台”での65歳以上の高齢者の構成率にはほとんど差がありません。 すなわち、高齢歩行者は、“薄暮の18時台”でも既に“暗い18時台”と同じような行動をとっていると考えられます。75歳以上での構成率に注目すると、わずかではありますが、“薄暮の18時台”で一番高いことがわかります。

(図 section3-7)

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以上から、「薄暮時に高齢者の死亡事故が起きやすい理由は、薄暮時でも既に暗いときと同じような見え方をしている高齢歩行者と、薄暮時でもまだ暗くないと思っている非高齢者の運転者が同じ道路空間上に混在している事にあるのではないか」と吉田さんは話されています。

車の運転者は、「まだ周りが見えているからヘッドライトを点灯しない。」ではなく、「視力が低下している高齢歩行者に気づいてもらうためにヘッドライトを点灯する。というおもいやりを持つこと」がやはり重要なのではないかと思いました。
また吉田さんは「ハード側である、クルマにも自動でブレーキをする安全機能など日々開発され、搭載されつつあるが、あくまでも操作する人が あってのクルマであり、交通事故を減らす為には“安全に運転する気持ち”が大切。」とも話されていました。

 

おもいやりライトの事務局メンバーが以前岡山県警へ取材した際にも、「時間で動くのではなく、日の出、日の入りに合わせて生活の行動を変えていく」形だ と事故に遭うリスクも減るのでは?という話もあがりました。「時差通勤・通学の実施や、最近聞かれる、早朝出社すると会社が朝食を支給するといった会社が増える など、生活様式の変化が現れると、通勤通学のラッシュを避け、働きやすい環境になるだけではなく、交通事故を減らすことにもつながるかも」と相互に意見が出されました。
また、交通事故にあいやすいとされる、高齢者の意識や行動の改革として、「高齢者同士で運転方法を採点し合い交通事故防止への啓発活動も行われている」とのこと。

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今回吉田さんにお話を聞きすることで、交通事故の現状についてお聞きするだけでなく、交通事故が起きるまでに至った人の行動や気持ちなど、今後ヘッドライト早期点灯研究所としても調べてみるべき内容など、今後の課題も見ることができた取材となりました。
周囲のクルマや歩行者におもいやりを持って、
クルマを運転する方はオートライトの活用と早めのヘッドライト点灯、
歩行者、自転車の方は見られやすくする為の色や反射材の着用を実践してみませんか?

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