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2012年08月13日

被災地でおもいやりライト運動について考える

 

山形訪問の翌日、東日本大震災による津波の被害を受けた陸前高田に足を運びました。なぜ被災地を訪れたのか。それは、1月の市民会議に仙台から横浜まで来てくださった方が、「被災地には未だに信号や街灯のない地域がある。被災地にこそ、おもいやりライト運動が必要だ。」と力強くおっしゃっていた言葉が印象に残っていたからです。交通のインフラが整っていない場所で改めて、おもいやりライト運動の意味を考えてきました。

復興のシンボル「奇跡の一本松」周辺のいま

陸前高田に向かう道すがら、復興のシンボルとして保存の方針が固まっている「奇跡の一本松」への行き方を聞くと、コンビニの店員さんがぐっと言葉を詰まらせ少しの間目を潤ませた後で、丁寧に道を教えてくださいました。もうすぐ映像を通じてみていた最も被害の大きかった地区です。
震災から1年半ほど。瓦礫の撤去がすすみ、大きな建物以外はほとんど更地にされて夏草が茂っています。市役所だった場所には献花台があり、手を合わせて震災で亡くなった方のご冥福を祈ってきました。この地区でみる風景には圧倒されてばかりで、メディアを通じてみてきた被害の様子が次々と脳裏をよぎります。

ふと気がつくと、車のナビが「この信号を左折してください」と言うその場所に、信号がありませんでした。道は整えられてあるものの、周辺には崩れそうな建物以外、街灯もありません。見渡してみると、車の行き来が多い道路を中心に仮設の信号が設置されているようです。優先順位の関係か、主要道路を外れるとまだまだ信号の設置は間に合っていないようです。それでも、仕事やボランティア活動などで行き交う車の交通量は、けして少なくはありませんでした。

おもいやりライトタイムの道路状況

日が暮れ始めるおもいやりライトタイムには、こうした信号も街灯も設置されていない場所でも日中より交通量が増えます。一日の仕事を終えて帰宅する人々が今でもこうした道路を使用しているようです。交差点でしばらく車が行き交う姿を見てきました。
周辺の見通しはいいものの、伸びてきた夏草に接近してくる車の車体が見え隠れして、車の存在に気がつくのが遅れるます。信号がありませんから、車の存在に気がつくのが遅れると、交差点で思わず「おっとっと!」と慌ててしまいそうです。一部の車は、周囲の状況に気を取られているのか、交差点に差し掛かったことに気がつくのが遅れ、ここで少々慌てている様子も見受けられました。しかし、地元の方の車なのでしょうか、行き交う車の多くは早めにライトを点灯し、交差点ではしっかりとブレーキを踏んで一時停止し、左右を確認していきます。これまで見てきた地域のどこよりも、おもいやりライトタイムにヘッドライトを点灯している車を多く見かけました。

ヘッドライトの灯りに、意志を感じる

こうした被害の激しかった地域に暮らす方々には、様々な事情があることと思います。そんな方々が、おもいやりライトタイムに灯すヘッドライトにはなにか、「ここで踏ん張る」「これからを生き抜く」という、意志を感じてしまいます。この場所での「おもいやりライト」は、生活のためのもの。ヘッドライトの早期点灯は必要に迫られた、切実さを持って行われていることなのです。

こうした被災地で活動をしているのは地元の方ばかりではありません。瓦礫の片付けをする工事車両や、ボランティアとして訪れている人、復興プランを策定するための調査に来る人など、県外からも多くの人が訪れています。
岩手県遠野市にある神奈川県からボランティアに来る人々の為のボランティアステーション、きんたろうハウスでもお話をお伺いしてきました。

地元の方の言葉、様々な地域から集まるボランティアさん

「復興のために県外から来る車はやはり増えていると思います。」

そう話してくださったのは、この7月からかながわ金太郎ハウスのスタッフとして働くことになった地元出身の菅原正臣さん。「もともとこの辺りの地域には街灯が少なかったんです。震災後に建物が倒壊してしまった場所では、より暗さが増しています。そんななか、暗い服を着ている人はなかなか見つけづらい。」のだそう。陸前高田の信号や街灯のない場所で夕暮れ時に歩いている人が、暗い色の服を着ていたために「見えづらいなぁ。」という感想を持ったことが思い出されます。ヘッドライトを早めに点灯することで、ドライバーが気をつけることに加えて、やはり歩行者がサムシングイエローなど、身体の一部でも目立つ色のものを身につけることが大切。ここはまだまだ取り組みがいのありそうです。

「ボランティアさんの安全も気になります。うちのボランティアさん達はそんなことないのですが、道路でのマナーが悪い方々を見かけると、気をつけなくっちゃなと思います。」

道路の状況は、街灯の少ない地域と深夜まで明るい都会では大きく異なります。それにより気をつけなくてはいけないポイントも、もちろん違う。ドライバーの多い地域では浸透している、ヘッドライトを早めに点灯することや明るい色や反射材を身につけ車から見られやすくすること、都会暮らしの人はもしかしたら少し意識が少ないかもしれません。ボランティア活動には、神奈川からだけではなく、全国各地から多くの方々が参加しています。そのことで地元の方ならよく知っている、「気をつけなくてはいけないポイント」を、そこにいる誰もが共通に理解しているわけではないという状況も生まれそう。

おもいやりライトのコンセプトが全国に広まれば、夕暮れ時にどの地域にも通用する「気をつけなくてはいけないポイント」を、誰もが同じように理解するということにつながります。このことが、土地勘の少ない方がボランティア活動を行う時の、ちいさな手助けになればいいなと思います。

「被災地にこそ、おもいやりライト運動を」

陸前高田のほか、仙台の多賀城・塩竈周辺の状況を見てきたうえで、仙台からおもいやリライト運動横浜会議に来てくださった方の言葉を改めて思い起こすと、その言葉に込められた気持ちが深く理解できたような気がしています。
地震や津波のような非常事態がおこった後でも、その傷跡とともに日常は淡々と続いていく。大変なことがあった地域だからこそ、いまある日常を少しでもあたたかいものにしたい。車、自転車、歩行者、道路を使う全ての人が、自分自身の安全と道路を共有している他の方の安全をおもいやり、毎日を少しだけ快適に過ごすことができればいい。
現在の被災地で見られる、生活のための“否応なし”のヘッドライト早期点灯を、他の地域から来た人は、おもいやりライトを灯してサムシングイエローを身に着けることで、尊重して応援していくようなことができればと考えました。

いかがでしたか?もしよければシェアして早期点灯の話題を広めてみませんか?

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