「ヘッドライト早期点灯研究所」は、早期点灯の実施に役立つ情報の調査を行うチームです。今回は最近インターネット上でも議論の話題に上がる、交通ルールについてフォーカスします。今回は業界の動向に詳しい、モータージャーナリスト 鈴木ケンイチさんに調査を依頼。運転免許の更新時に受け取る、「交通の方法に関する教則」と「道路交通法」を改めて読み直し、早期点灯のポイントをまとめてみます。
クルマを安全で気持ちよく走らせるには、路上のクルマみんながルールを守ることが重要です。ところが、運転免許を取得したときは勉強したけれど、それからずいぶんと時間が経ったため、一部を忘れてしまったという方もいるでしょう。また、新たに作られたルールもあり、それらを逐一チェックするのも面倒です。そのため、「こうした方がいい」「それは間違いで、こっちが正しい」と意見が異なることも。
特に最近は、ヘッドライトの使い方について、いろいろな意見が飛び交っているのを目にします。たとえば、高速道路では「ハイビームが基本」です。もちろん対向車や先行車がいるときは、ヘッドライトを下向き(ロービーム)にしますが、ほかの車両がいないときは上向き(ハイビーム)です。これを知っている人は、意外と少数派なのではないでしょうか?
そこでヘッドライトの使い方に限って、正しいルールはどういうものかを考えてみようと思います。
まず、クルマの運転には、明確なルールが存在します。それが道路交通法です。これが、クルマの運転方法の根本となる決まりです。ここを押さえずに、思い込みや経験だけでルールを語るのはNGです。
ヘッドライトの使い方は「車両等の灯火」(法第52条)に記されています。平成27年4月に発行された「わかりやすい道路交通法」(一般財団法人 全日本交通安全協会 発行)から引用してみましょう。
自動車→ 前照灯、車幅灯、尾灯(尾灯が故障しているときは、これと同等以上の光度を有する赤色の灯火)、番号灯、室内照明灯(乗合自動車のみ)
また、夜間以外の時間であっても、トンネルの中、濃霧がかかっている場合やその他の場所で、視界が高速自動車道路及び自動車専用道路においては200メートル、その他の道路においては50メートル以下の暗い場所を通行する場合も同じである。
(5万円以下の罰金、過失犯も同じ)
このように罰金まで定めて、「暗くなったらヘッドライトを点灯すること」とヘッドライトをつけることが定められています。ここで注意してほしいのは「トンネルの中」や「暗くて視界の悪い」ところもヘッドライトの点灯が必要なこと。たまにトンネル内で「自分は見えているから大丈夫」とヘッドライトを点灯しない人がいますが、それは間違いです。ヘッドライトの点灯は自分だけではなく、まわりのクルマや歩行者にも必要なものだからです。ヘッドライトの点灯は、そこにクルマが存在していることを周囲にアピールする意味合いもあるのです。
また、道路交通法には、他のクルマとすれ違うときの決まりもありました。
光度が1万カンデラを超える前照灯をつけている自動車→前照灯の光源を減じ、又はその前照灯を下向きとすること。
他のクルマとすれ違うときは、ヘッドライトを下向き(ロービーム)にしないと罰金の対象になってしまいます。これはぜひともしっかりと覚えておきましょう。また、ヘッドライトの光軸調整もしっかりしていないと、下向き(ロービーム)にしても意味がありません。背の低いクルマを愛車にしている自分としては、光軸がおかしくなって、下向き(ロービーム)でも十分にまぶしいことがあります。同じようにまぶしいと捉えるクルマが相当数存在することを、しっかり覚えておきましょう。
道路交通法は厳密な交通ルールですが、リアルな路上のすべてを規定しているわけではありません。そこで登場するのが「交通の方法に関する教則」です。道路交通法によって、国家公安委員会が作成するもので、道路交通法を守るだけでなく望ましい交通方法までが含まれます。そこには、もちろんヘッドライト関係の記載もあります。平成28年4月発行の「わかる身につく 交通教本」(一般財団法人 全日本交通安全協会 発行)から一部を引用してみます。
「第6章 危険な場所などでの運転」「第3節 夜間」「灯火」
(1)夜間、道路を通行するときは、前照灯、車幅灯、尾灯などをつけなければなりません。昼間でも、トンネルの中や濃い霧の中などで50m(高速道路では200m)先が見えないようなときも同じです。
(2)対向車と行き違うときは、前照灯を減光するか、下向きに切り替えなければなりません。ほかの車の直後を通行しているときも同じです。
(3)交通量の多い市街地の道路などでは、常に前照灯を下向きに切り替えて運転しましょう。また、対向車のライトがまぶしいときは、視点をやや左前方に移して、目がくらまないようにしましょう。
(4)見通しの悪い交差点やカーブなどの手前では、前照灯を上向きに切り替えるか点滅して、ほかの車や歩行者に交差点への接近を知らせましょう。
先ほどの道路交通法では、ヘッドライトを点灯する時間は、夜間(日没時から日出時までの時間)と決められていますが、教則では、「早めにライトを点灯し、自分の車の存在を知らせるようにしましょう。」と書かれています。他のクルマや歩行者とぶつからないためには、相手に自分の存在をアピールすることが重要です。車線変更などをしようとしたときに、行こうとしたスペースに別のクルマがいてヒヤリとした経験は誰にでもあるもの。夕方は、自分だけでなくまわりのクルマや人も視界が悪くなる時間帯です。日の入り前に早めにヘッドライトは点灯しましょう! それだけで事故の可能性はグッと下がります。ライトスイッチを一捻りするだけ。なんと簡単な事故予防法でしょうか!
また、同じ教則内には、高速道路での走り方の注意もあります。
<引用> 「第5章 高速道路での走行」「2-3 走行方法」 (12)夜間は、対向車と行き違うときやほかの車の直後を通行しているときを除き、前照灯を上向きに切り替え、少しでも早く落下物や交通事故などにより停止した車両を発見するようにしましょう。
つまり、夜間の高速道路ではヘッドライトを上向き(ハイビーム)が基本です。そして、対向車や前走車がいる場合のみ下向き(ロービーム)にします。冒頭に説明した「高速道路はハイビームが基本」は、教則で明記されたものでした。また、一部報道では、来年の教則の改定で、「人や交通量の少ない郊外はヘッドライトを上向きとして、ほかの車両とすれ違うときやほかの車両の直後を走るときは下向き」との記載が追加されるとあります。つまり、交通量や人の多い街中だけがヘッドライト下向き(ロービーム)で、ほかの郊外や高速道路はヘッドライトの上向き(ハイビーム)が基本となります。
まとめると、
「夕方になって少し薄暗くなる前にヘッドライトをONに」
「トンネル内もヘッドライトをONに」
「対向車とすれ違うときと、ほかのクルマの直後を走るときは、ヘッドライトを下向き(ロービーム)に」
「街中ではヘッドライトは下向き(ロービーム)」
「高速道路と郊外はヘッドライト上向き(ハイビーム)が基本に、対向車や先行車がいるときは下向き(ロービーム)」
となります。早期点灯はルールとしても定められているので積極的に点灯していきたいですね。
説明は細かなものでしたが、内容的には、それほど変わったことではないかと思います。道路交通法や教則に関する小冊子は、運転免許更新のときにもらっているはずです。「あれ? 何が正しいのかな?」と疑問に思ったときは、小冊子を探し出してチェックしてみてはいかがでしょうか。また、細かな改定がたびたび行われているので、最新号を入手するようにしてください。
クルマのヘッドライトは年々、進化を遂げており、20年前から比べると、ものすごく明るくなっています。明るくなれば、当然、ほかの車両や歩行者をいち早く見つけることができるだけでなく、自車の存在を周囲のクルマや歩行者にも認識してもらえるので、それだけで交通事故のリスクが減ります。ただし、それもヘッドライトを点灯しなければ意味がありません。「燃費が悪化する」と考える人もいるようですが、最新のヘッドライトは消費電力もどんどんと少なくなっています。少しくらいヘッドライトを長い時間点灯させたくらいでは、目に見えるほど燃費は悪化しません。どんどんヘッドライトを点灯させましょう。夕方の点灯のタイミングも早めましょう。オートライト機能があれば、点灯忘れを防ぐことができます。これも、どしどし使うようにしましょう。
そして、歩行者、自転車の方は明るい色の服装や反射材の着用がおすすめです。地味な色味の服装の歩行者や自転車の方は、ドライバーに、その存在を見落とされやすいもの。それだけで交通事故のリスクがグンと高まってしまいます。反射材を使ったキーホルダーなどをカバンにつけるだけでも効果が期待できます。ぜひとも実践してみてくださいね!
交通事故は、被害者だけでなく加害者側にとっても不幸そのもの。誰一人嬉しくない事故を減らすために、ヘッドライトの正しい使い方を理解し、どんどん!活用するようにしましょう。
●鈴木ケンイチ
1966年9月生まれ。
國學院大学卒。雑誌編集者を経て、1997年にフリーランスへ。国産車、輸入車、チューニングカーなど幅広いジャンルで執筆。最近は新技術や環境関係に注目。環境社会検定試験(ECO検定)
『モータージャーナリスト鈴木ケンイチの弾丸ブログ』
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